DAY 12026年7月17日(木)
市場の全体像と参入ゲート
— ペット1.9兆円市場の中で「トリミング×ホテル」はどこにいるか
初日は土台づくり。市場規模・飼育頭数・単価相場・規制という「変えられない外部条件」を先に押さえ、SSINの強みが効く場所と効かない場所の仮説を立てる。
今日の要点(TL;DR)
- ペット関連総市場は1兆9,108億円(2024年度見込・矢野経済研究所)。頭数が頭打ちでも「1頭あたり支出の増加=プレミアム化」で年2〜4%成長が続き、2027年度に2兆円超え予測。美容業界と同じ「単価アップ型市場」。
- ただし主役の犬は682万頭で長期減少からの下げ止まり。トリミングは「伸びる市場」ではなく「支出が濃くなる市場」で戦うことになる。
- トリミングのユニットエコノミクスは眉サロンより構造的に重い:施術90〜120分×単価7,000〜9,000円 → トリマー1人の月商上限は50〜80万円が標準。高単価特化で120万円/人の実例あり。
- ペットホテルは同じ「保管」登録で併設でき、1泊4,000〜15,000円。非施術時間・夜間を売上化できるトリミングとの補完関係。
- 最大の参入ゲートは規制ではなく「動物取扱責任者」の要件を満たす経験者の確保。眉サロン式「未経験採用→研修」だけでは店を開けない可能性が高い(要件詳細は次回一次確認)。
ペット関連総市場(2024年度見込)
1.91兆円
前年度比 +2.6%・2027年度 2.03兆円予測
犬・猫 飼育頭数(2025年)
1,567万頭
犬682万・猫884.7万。合計は頭打ち
トリミング客単価の相場
7–9千円
高単価店は1.4万円の実例(世田谷)
ペットホテル 1泊相場
4–6千円
ケージ・小型犬/猫。個室型は8千〜1.5万円
01市場規模 — 頭数が増えない中で伸び続ける1.9兆円
矢野経済研究所の2025年調査によると、国内ペット関連総市場(小売金額ベース)は2024年度に1兆9,108億円(前年度比+2.6%)。2020年度の1兆6,842億円から4年で+13.5%伸び、2027年度には2兆279億円に達すると予測されている。
ペット関連総市場規模の推移と予測(2020–2027年度)
単位:億円。2024年度は見込、2025年度以降は予測(薄色)
出典:矢野経済研究所「ペットビジネスに関する調査(2025年)」
内訳を見ると、動物病院・トリミング・ペット保険などを含む「生体+サービス分野」が8,542億円(構成比44.7%)で最大セグメント。市場の4割超がサービスで、モノからコト(医療・美容・預かり)へ支出の重心が移っている。
総市場の構成(2024年度見込・1兆9,108億円)
生体+サービス 44.7%
フード 37.6%
用品 17.7%
| 区分 | 市場規模 | 構成比 | 前年比 |
| 生体+サービス分野(動物病院・トリミング・保険等) | 8,542億円 | 44.7% | +1.2% |
| ペットフード(末端市場) | 7,183億円 | 37.6% | +3.8% |
| ペット用品(末端市場) | 3,383億円 | 17.7% | +3.5% |
出典:矢野経済研究所(2025年)。トリミング・ホテル単体の市場規模の切り出しは公開資料になく、次回以降に推計する
💡 壁打ちメモ — 眉毛市場との構造比較
この市場の伸び方は美容業界(アイビューティー)と同型。客数(頭数)は増えない。単価と頻度が増える。つまり勝ち筋も同じで「安売り集客→高回転」より「高付加価値化・リピート設計・LTV」が効く市場。SSINが眉で磨いてきた「次回予約・回数券・カウンセリング」の型がそのまま論点になる。
02飼育頭数 — 犬は減少から下げ止まり、市場の質は「高齢化×家族化」
ペットフード協会「全国犬猫飼育実態調査(2025年)」によると、犬682万頭・猫884.7万頭。犬は2016年の800.8万頭から約15%減少して2024年に底を打ち、2025年にわずかに反転。猫は2024年の915.5万頭をピークに884.7万頭。
犬・猫の飼育頭数の推移(2016–2025年)
単位:万頭
犬猫
出典:ペットフード協会「全国犬猫飼育実態調査」各年
トリミング需要の主役は犬(特にプードル等のカット犬種)なので、「顧客の母数は今後10年増えない」前提で事業を設計する必要がある。一方で追い風は次の3つ。
- 家族化 — 1頭あたり支出は増加トレンド。プレミアムフード・保険・美容への支出が伸びている。
- 高齢化 — 平均寿命の延びで高齢犬が増加。シニア対応トリミング・介護的ケア・通院代行など高単価ニーズが拡大。
- 新規飼育は年78.4万頭(犬45.1万・猫33.3万)— 毎年一定の「新規客の入口」は生まれ続ける。
03トリミングのユニットエコノミクス — 眉より「1人あたり月商の天井」が低い
複数ソースから相場観を突き合わせると、標準的な数字は次の通り。
| 指標 | 相場 | ソース |
| 客単価(シャンプー&カット) | 7,000〜9,000円(小型犬中心) | 開業損益シミュレーター(more-andf) |
| 施術時間 | 1頭 90〜120分 | 業界標準 |
| トリマー1人の処理能力 | 1日 3〜4頭 | trimal(現役オーナー) |
| トリマー1人の月商 | 1日3頭→50〜60万円 / 4頭→70〜80万円 | trimal |
| モデルケース | 単価8,500円×4頭×22日 = 74.8万円/月 | 規模別利益構造モデル(takaoki) |
| 高単価特化の上限例 | プードルカット単価1.4万円で1人月商120万円 | DOG SALON FREESIA(世田谷)実例 |
| 人件費率 | 40〜50%が業界特性 | more-andf |
| トリマー給与 | 年収300万円前後が中心。「雇われで396万円は高い方」 | trimal ほか求人系メディア |
⚠️ ここが眉サロンとの決定的な違い(要・内部実数での検証)
眉は1席で30〜45分×単価6,000〜7,000円台を回せるのに対し、トリミングは1頭90〜120分×7,000〜9,000円。人時売上が構造的に眉の半分前後になり、「1人あたり月商100万円超」は高単価特化でようやく届く水準。つまり眉と同じ「駅前×多席×高回転」モデルの単純移植は効かない。
→ 勝ち筋の仮説:①高単価×指名制(美容室型)②ホテル・物販・サブスク(月額通い放題)での複合単価 ③眉で実証済みの「次回予約・回数券」型のリピート固定。犬の毛は4〜8週で確実に伸びる=来店周期が眉以上に強制力を持つのはリピート設計上の強み。
04ペットホテル — 同じ免許で併設でき、非施術時間を売上化する
1泊の相場はケージタイプ(小型犬・猫)4,000〜6,000円、個室・中大型犬8,000〜15,000円。年末年始・GW・夏休みはシーズン料金が加算される繁忙期型ビジネス。
トリミングとの相性は良い:同じ「第一種動物取扱業(保管)」の登録でカバーされ、設備・人員を共有しながら、トリミングが埋まらない時間帯・夜間・連休を売上に変えられる。ホテル利用時のトリミングセット販売(お迎え前に仕上げる)はクロスセルの定番。
ただし競合としてペットシッターのマッチングアプリ(Fluv等、1回4,000〜6,000円)が「預けない」選択肢として都市部で台頭している点は要注視。ホテル単体で戦うのではなく「トリミング顧客の預かり需要を取り切る」位置づけが安全か。
05規制 — 参入ゲートは「登録」ではなく「人」
トリミングサロン(預かりを伴う場合)とペットホテルはいずれも動物愛護管理法の「第一種動物取扱業・保管」に該当し、事業所ごと・業種ごとに都道府県知事等の登録が必要(環境省)。無登録営業は100万円以下の罰金。
| 要件 | 内容 | 事業への含意 |
| 業種登録(保管) | 顧客の動物を預かる業。ペットホテル・美容業者(預かる場合)・シッターが該当 | トリミング+ホテルは1つの区分で両方カバー |
| 動物取扱責任者 | 事業所ごとに専属・常勤で配置。獣医師/愛玩動物看護師、または「実務経験等+所定資格」などの要件(詳細要確認) | 店舗展開速度の律速要因。未経験採用だけでは開店できない |
| 施設基準(2021年数値規制) | ケージサイズ・飼養環境等の数値基準(環境省令) | 物件選定・内装設計に直結。眉サロンより坪要件が重い |
| 定期報告 | 毎年5/30までに頭数等を都道府県へ届出。立入検査あり | 店舗オペに管理業務が乗る |
⚠️ 最重要リスク仮説
SSINの強みは「未経験を採用して研修で戦力化する」仕組みだが、この業界は開店の前提として要件を満たす『動物取扱責任者』=経験者が1店舗に必ず1人必要。トリマー業界は年収300万円前後と待遇が低く離職も多い=採用市場としては攻めやすいが、「責任者になれる経験者」の獲得競争が実質の出店ボトルネックになる可能性が高い。眉の「11期採用戦略」で得た採用マーケのノウハウがどこまで通用するか、Day4(採用市場調査)で深掘りする。
06SSINの強みは効くか — 転用可能性の初期仮説
| SSINの既存アセット | 転用可能性 | コメント |
| 多店舗オペレーション(直営14+加盟55) | ◎ | 店長育成・SV体制・日報/KPI管理はそのまま効く |
| Kiwi(LINE予約・リマインド・再来配信) | ◎ | ペット業界の予約DXは遅れている。再来周期4〜8週の強制力×自動配信は最強の組み合わせになりうる |
| 採用マーケティング(応募数ボトルネック解消の型) | ○ | トリマーは低待遇で不満層が厚い=好待遇提示で採れる仮説。ただし責任者要件が別問題 |
| 回数券・次回予約・カウンセリングの型 | ○ | 単価アップ型市場と相性◎。ペット版カウンセリング(犬種カルテ)に翻訳が必要 |
| HPB運用ノウハウ | △〜× | ペットにはHPBが存在しない。集客はGoogleマップ・Instagram・EPARKペットライフ等で構造が別物 → Day3で解明 |
| 空中階・省面積の物件戦略 | × | 動物可物件+数値規制+騒音・臭気で1F路面が基本。物件難易度は眉より高い |
07未解決の論点
- トリミング・ペットホテル単体の市場規模はいくらか?
- 矢野の「生体+サービス8,542億円」の内訳が公開資料にない。富士経済等の推計や頭数×利用率×単価のボトムアップ推計で次回以降に出す。
- 動物取扱責任者の要件の正確な中身は?
- 「実務経験半年以上+資格」等の組み合わせと言われるが一次情報(自治体・環境省)で確定させる。フランチャイズ加盟で緩和されるものではない点も確認。
- 集客チャネルの覇者は誰か?
- 「ペット版HPB」が不在なら、Googleマップ×Instagram×LINEを自前で組めるSSINには追い風。EPARKペットライフ・楽天ペット等の実力を要調査。
- 眉サロン併設 or 独立ブランドか?
- 顧客層(30-40代女性・ペット飼育層)の重なりはありそうだが、物件要件が違いすぎるため併設は非現実的か。会員基盤のクロスセルは可能性あり。
08次回(Day 2)の壁打ちテーマ
- 競合チェーン研究 — イオンペット(PeTeMo)、Coo&RIKU、ペットプラス、QUATTRO、トリミングFC本部(出店数・価格・立地・ビジネスモデル・FC条件)
- その後の予定:Day3 集客チャネル構造/Day4 トリマー採用市場/Day5 投資回収モデル(初期投資・損益分岐・眉との資本効率比較)
- 宿題(宮脇さん判断待ち):①エリアの初期仮説(首都圏?関西?既存店商圏?)②想定する業態規模(1人型/複数トリマー型/ホテル併設型)があればDay5のモデルが具体化できる
09出典
- 矢野経済研究所「ペットビジネスに関する調査(2025年)」プレスリリース(2025年8月)— 総市場規模・セグメント別
- ペットフード協会「全国犬猫飼育実態調査(2025年)」— 飼育頭数・新規飼育数
- 環境省「第一種動物取扱業者の規制」(動物愛護管理法)— 登録区分・基準・罰則
- trimal(トリミングサロン経営メディア・現役オーナー運営)— 1人月商の相場・高単価事例・トリマー年収
- more-andf「ペットサロン損益シミュレーター」— 客単価相場・人件費率
- Fluv「ペットホテル料金相場」(2026年5月)— 1泊料金相場・シッター競合
- takaoki(Threads)「トリミングサロン規模別利益構造モデル」— 1人あたり売上モデル